激しい攻防の末に2つの綱がカナチ棒でようやく結ばれると、綱引きの始まりだ。双方が必死になって綱を引く。双方の引き手の人数は決まっていない。数十分も綱引きをしているから、劣勢になった側が慌てて自宅に戻って家族に「早く綱を引きに来て」と応援を集めたりする。
喜屋武の住民でなくても参加していい。夜勤に出かける前に少しだけ見物しようと思ってやって来た人が、自分の側が劣勢になって慌てたおばあさんから「にいさん! こんなして立って見てたらいかんよ! 早く引きなさい!」と急き立てられ、仕事前だというのにワイシャツもスラックスも汗まみれになってしまったという実話がある。
カナチ棒の付近ではまたまた小競り合いが多発する。つかみ合いになった人が、近くで撮影している私にぶつかってきた。小競り合いの末、吹き飛ばされてきたのだった。と思ったら、今度は初老のおじさんが転がされたうえ蹴られている。
流血もある。にもかかわらず、警察官の姿はない。出店もない。薄暗い路地で綱引きが続く。喜屋武の住民の熱気だけが立ちこめている。