那覇の大綱引きと比べると、喜屋武の綱引きの特徴が際立つ。
集落の人が自分たちで楽しむための祭りである。それが端的に表れているのが、思い思いの服装だ。那覇の大綱引きのようなカッコイイ衣装はない。しかし、喜屋武のほうがかえって素朴でいい。
真剣勝負なのもいい。流血沙汰もあった。公民館が発行している『上筋から』52号によると、ほかの地域の綱引きの中には「勝敗を分け合う」ことがある。いわゆる「八百長」「出来レース」である。喜屋武の綱引きは勝ち負けにこだわる。熱く真剣な勝負なのである。
いずれも、中途半端に観光化していないからできることである。喜屋武の集落の人たちは、自分たちが勝つために綱を引いている。それ以上ではなく、それ以下でもない。勝つために自分の手で綱を引く。これ以上の純粋な楽しみがほかにあるだろうか。
午前1時前、道路に散乱する綱の切れ端が、闘いの激しさを物語る。真夏の夜の夢。